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STORY FROM SOIL AND FARM

土、畑にまつわる話

STORY FROM SOIL AND FARM

THE BOOK OF TOFUのこと

DATE: 2021/10/25

この夏、アメリカ人禅師であり、鎌倉に150年続く増田屋豆腐店に弟子入りしていたWilliam Shurtleffの著書、THE BOOK OF TOFUという本に出会いました。FIND VEGGIEというメディアを始めた意味を、誰かにあるいは何かに教えられることがあるなら、William ShurtleffのTHE BOOK OF TOFUはその答えを導いてくれる、運命の出会いのような一冊でした。

1975年に出版されたTHE BOOK OF TOFUは、たくさんのイラストを織りまぜながら、豆腐の栄養のこと、500種類の豆腐レシピ、日本の田舎の豆腐作り、そして豆腐の作り方まで、350ページにわたって綴られています。いま読んでも大変ユニークで斬新でありながら、先人から引き継ぐ知恵や、これからの新しい暮らしのヒントとなる本です。



この本の中で、Mr.Shurtleffは増田屋豆腐店3代目のことを以下のように著しています。「注意深く、丁寧な仕事に深く感銘を受けました。ダンスのような軽々としたリズムの彼の動きは正確で美しい。本物の達人は、伝統、自然な作り方、職人の精神に敬意を払います。伝統的な刀の職人や陶芸家のように、彼の日々の暮らしは、鍛錬であり、精神的な修行であり、あるいは日本でいう所の「道」でした。増田屋さんの豆腐づくりは儲けるための技術ではなく、他者を思って作る喜びであり、それはすなわち日本人が考える、生きる道のようなものでした」。

この時、Mr.Shurftleffが感じた気持ちは、今年の夏、早朝3時半から静かに厳かに豆腐を作る4代目増田さんを取材した時に私が感じた気持ちと同じものでした。「家業を継いだ理由は、近所の常連の方の細くても長く続けて欲しいという言葉でした」という増田さんの言葉は150年引き継がれる増田屋豆腐店の哲学なのだと思います。

THE BOOK OF TOFUに記させる私の好きな一節は、「私は、一番の師匠は豆腐そのものだと気がつきました。世界中に水が流れ、その流れが止まらないように、豆腐もそれを調理する作り手に身を委ねて様々な形に変化していくのだと思います」という言葉。

その昔、宮大工は山の南側で育った木は建物の南側に作り、北側で育った木は北側に使っていたそうです。山では方向や標高、地形、保水力、日当たり、風向きによってそこに生息している木々の性質が異なるからです。それぞれの木々の性質と能力を尊び生かす先人の心がありました。

FIND VEGGIEが出会った料理人たちにも、同じ心が引き継がれています。目のまえにある野菜を愛おしみ、つくることをやまず、巡らせてゆくこと。FIND VEGGIEは、美しい野菜やそれを作る人、そして活かす人たちの想いを紡いでいきたいと思います。

THE BOOK OF TOFU
Copyright @ 1975 by William Shurtleff and Akiko Aoyagi


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