スウェーデン、カナダ、日本
多国籍な食のルーツを持つカフェ

野菜たっぷりスープとビスケットの幸せなハーモニー

朝8時、モーニング目当てのおなじみの顔ぶれが来店し、リラックスした雰囲気でメルティングポットの1日はスタートする。海岸が近いため海帰りのお客さんも多く、エントランスにはさりげなく砂落としも常備。ランチタイムは観光客と地元の人々で賑わいを見せ、誰もが思い思いの時間を過ごす。生まれも育ちも鎌倉というオーナーシェフの原さんは、幼少の頃から自分のお店を持つことが夢だった。ずっと思い描いていたのは、ハレの日のためではなく、何でもない日常のさまざまな風景に溶け込む、まさにメルティングポットのようなお店。

カナダとスウェーデンでシェフのキャリアを積んだ原さんは鎌倉生まれの鎌倉育ち

こちらの名物といえば、日替わりのスープとビスケット。スープに使う野菜は、できるかぎり地元産、国産を使用している。化学調味料不使用で丁寧に素材の旨味を引き出し、ほっとするような奥深い味わいを生み出す。また北海道小麦100%を使用したビスケットは、ワーキングホリデーでカナダにいた時に働いていたベーカリーのバターミルクビスケットがベースだそう。日本で手に入る食材を用いて独自にアレンジを加えることで、お菓子とパンの中間のような食べ応えのある一品に仕上げている。また普段から食品ロスが出ないよう、どのメニューにおいても一度に大量に作ることをせず、ちょっとずつ作って材料を使い切るということを徹底している。

定番メニュー、トマトとモッツアレラチーズのスープ

アールグレイやオレンジピールなど色々なフレーバーがあるビスケット

原さんのご主人とお義父さまとスェーデンのザリガニパーティーの様子

実は原さん、カナダのあとにスウェーデンにも移住し、北欧の有名なレストランガイド、WHITE GUIDEにも紹介される数々の人気レストランでシェフとしての経験を積んできた。その縁でメルティングポットでもスカンジナビア料理を味わえるというわけだ。実はスウェーデン時代のある店では、シェフが数人いても共通のレシピが存在せず、“いつも違う味”が当たり前だったそう。“料理は人間が作っているものだから、工場で作ったみたいにいつも同じ味になる方がおかしい”。その発想は日本で生まれ育った原さんにとって、100%同意できないまでも、どこか新たな視点を手に入れたような、小気味良いカルチャーショックだったことは間違いないだろう。

今までも個別のリクエストに答えて可能な限りのベジ対応をしてきたが、このたびレギュラーのヴィーガンメニューとして、季節の野菜のポタージュスープ、スウェーデンの伝統的なポテトパンケーキ、ラグムンクを野菜オンリーでアレンジしたものを開発。店に集まる人々の顔ぶれもそうだけれど、多国籍で多様性のあるメニュー構成は、まさにメルティングポット（異なる人種、民族による多様な文化が溶け合い、新しい生活文化を生み出すこと）そのもの。原さんの得意料理、とろとろに煮込んだスープにかけてお父さんが命名した店名は、まさに体を表していると言えるだろう。

スウェーデンの人は誰もが知っているラグムンク。リンゴンベリーのソースと豆腐クリームのビーガンバージョンは原さんオリジナルレシピ